(2011.12.01)

天職と出会った
ベルドア    奈良将史さん    34歳

ワンダフルワークス39回目は、横浜ベイシェラトン ホテル&タワーズで、ベルドアとして働いていらっしゃる奈良将史さんです。ホテルの顔としてお客様を最初に迎え、最後に気持ち良く送り出すという仕事柄、素敵な笑顔で、終始にこやかにインタビューに応じてくださいました。

アルバイトから正社員へ

質問
—まずホテルマンになったきっかけを教えてください。
奈良さん
大学を卒業してSEとして就職しました。でも肌に合わず半年で離職して、その次の仕事も半年ほどで辞めました。 そんな時にホテルに就職した友人から「接客面白いよ」と言われたのがきっかけですね。 もともと居酒屋でアルバイトしていたこともあり接客業が好きだったので、ホテルの世界に飛び込みました。そこからアルバイトとして2年間ベルドアの仕事を、社員となってからはフロント業などを経験して、現在はベルドアのまとめ役をやっています。
質問
—ベルドアというのはどういったことをするんでしょうか?
奈良さん
正面玄関でお客様を最初におもてなしするドアマンとしての職務と、部屋へのご案内とお荷物のお手伝いをするベルボーイとしての職務を併せ持った仕事です。一般的には「ドア」と「ベル」はそれぞれ分業されていることが多いのですが、当社では併せて「ベルドア」と称し、マルチジョブを行っています。宿泊のお客様だけでなく、ご宴会やレストランなどをご利用するお客様に対してのご案内なども行っています。

接客とは距離感を掴むこと

質問
—接客、仕事をする上で気を付けていることなどはありますか?
奈良さん
お客様に対してはもちろんですが、従業員間でも『距離感』を常に意識しています。 当ホテルのホスピタリティスピリット(理念)の中にも『ゲストとの距離感』という項目があるんです。 フレンドリーな接客を目指しているベイシェラトンとしては堅苦しくなり過ぎないように、ですが近くなりすぎてお客様にとって嫌な距離にならないように。これが一番重要なことだと考えています。
質問
—距離感ですか、なかなか難しそうですね。
奈良さん
ええ、お客様一人一人、千差万別ですからそれはもう大変です。 でも、その見極めがこの仕事の面白いところでもあるんです。
質問
—仕事で充実していると感じるのはどういう時ですか?
奈良さん
自分がやろうとしている作業と他の従業員との行動が合致したときです。 お客様が今なにを求めていらっしゃるのか、その考えをフロアの全員が共有して、アイコンタクトで行動出来たとき、思わず頬が緩みます。 皆がお客様との距離感・空気感を共有できたということですから。こういったスマートな接客が常に出来るのが理想なんですけど(笑)

マニュアルだけではない、一人一人に向けたサービス

質問
—苦労されてる点はありますか?
奈良さん
今、苦労しているのはやはり力仕事で体力勝負ということですね、フロントからベルドアの仕事に戻った時5キロ痩せました。 苦労ではないのですが、始めたばかりのころは、居酒屋でアルバイトをしていた経験からどこかそういう雰囲気が抜けないことがあって、先輩から「お前の接客は八百屋だな」と言われたことがありました。 でも、「元気でフレンドリーな接客」をモットーとしていましたので自分の色だと思って大切にしてきました。今では名前で呼んで下さるお客様もいます。
質問
—なるほど、でもホテルはそういったマニュアルに厳しそうな印象があります。
奈良さん
マニュアルはもちろんありますし、大事です。でも、先ほど言ったようにお客様は千差万別ですから、ベルドアはそれだけでは絶対に務まりません。 ベルドアの仕事を始めた当初、とある先輩が明かりを付けずに真っ暗のお部屋をご案内して「こちらはベイブリッジの夜景が一番きれいな部屋でございます。お客様にご満足いただけると思います」とカーテンをバッと開けたんです。 衝撃でした、マニュアルだけじゃないんだと感銘を受けた瞬間です。
質問
—アルバイトから正社員になったという経歴をお持ちですが、若い人にアドバイスをお願いします。
奈良さん
シェラトンで働くアルバイトの人 たちには、良いなと思ったことは取り入れるように、そして自分の色を見つけてマニュアルだけでないサービスをしてほしいと言っています。 このままホテル業界に進む、進まないにかかわらず、自分自身がステップアップをするために、人と人とのつながりを大事にしてほしい。お客様や従業員同士との会話、関わったすべての経験から社会人として成熟していってほしい、と思っています。

ホテルマンこそ天職

質問
—気分転換はどうされていますか?
奈良さん
特別意識はしていませんが、お客様に直接接する仕事なので張りつめている部分があると思います。ですから家庭に戻った時は仕事のことはほとんど話さないだとか、オンとオフを切り替えていますね。 あとは部屋の模様替えをして、気持ちを新たに仕事に行きます。 子どもと一緒にいるときが一番の気分転換なのですが、ここでは介入しすぎて『距離感』を掴めていません(笑)
質問
—奈良さんにとって仕事とは何ですか?
奈良さん
お金を稼ぐためにするのが『働く』ということ。その先にあるのが『仕事』だと思っています。 私にとって仕事=ホテルマンです、天職という意味で。そういう誇りをもって臨んでいます。
質問
—ありがとうございました。

文・撮影/三井泰平