(2012.01.31)

暮らしを作るということ
事業支援係長    鈴木康介さん    32歳

ワンダフルワークス43回目は、障害福祉サービス事業所共働舎で事業支援係長をしていらっしゃる鈴木康介さんです。障がいを持った人たちを支援し、働く場を提供、そして共に働く中で何を見てきたのでしょうか?焼きたてのパンの良い薫りが漂うお店の中で取材をさせていただきました。

障がいを持った人たちと一緒に仕事をすること

質問
—現在されているお仕事内容を教えて下さい
鈴木さん
障がいのある人たちが仕事をするために必要な支援を考え実行するということをしています。また係長として現場で支援をする職員と共に支援方法を考え、その支援を進めるということを行っています。 共働舎はパン製造・園芸・陶芸・販売の4つの部門からできています。内訳は10・41・18・3名の合計71人の知的な障がいを持った方が働いています。障がいのある人がモノを作って、それを売るという業務を障がいのある人と共に行っています。
質問
—共働舎で働くきっかけは何ですか?
鈴木さん
学生時代、将来的に何の仕事をしようかと考えているときに、知人から福祉の仕事が男手を求めているという話を聞いたのがきっかけですね。それまでも、障がいを持った人たちを全く見てこなかったわけではなかったので、そういうところで働くのも面白いかなと。 新卒で採用されて8年目になります。
質問
—実際に働く中で面白かった部分、苦労された部分は何でしょう?
鈴木さん
障がいを持った人たちと一緒に仕事をしていく上で、どうやったらおいしい物が出来るか、綺麗な花が咲くのか、使いやすい陶器ができるのか。どうやったらいいものができるのか、というところが難しいところです。 同時に一定の規格、工程を経る中で、どうやって障がいをもった人たちの仕事にしていくのか考えるところが面白いところです。

チャレンジドカップで大賞を受賞

質問
—具体的にどういった取り組みをしているんでしょうか?
鈴木さん
知的な障がいがある方は「わかる」ということに障がいがある人が多くいます。難しい、時間がかかる、というだけで「できない」わけではないのです。例えばアルバイトの新人が仕事を学ぶ場合、5個ぐらいの手順で教えるところを、10個或いは20個の手順で伝えるという具合です。「できる」というところに到達するまでは時間がかかりますが、一度身につけてしまえば問題なく仕事を進めることができます。 共働舎で働く人たちは、「〇〇して」「ここは〇〇するんだよ」と口頭で伝えるのではなくて、支援者自身の体を道具として使い、実際に支援者がやって見せてやり方を伝えるというように、まずは体をうごかして伝えるという姿勢をとっています。そういった取り組みをすると、障がい者のある人たちの理解はより早く、深くなります。
質問
—手順をわかりやすく分解する試みはいろんな場面で役に立ちそうですね
鈴木さん
そうですね。 先日、パン・菓子製造の活動している福祉施設が参加するチャレンジドカップという大会で大賞を受賞したのですが、共働舎は職員を補助に付けないで参加しました。そこで、使う道具や工程表は個人個人に合わせてカスタマイズした物を使いました。審査員を務めた帝国ホテルベーカリー統括シェフの方や、人気パン屋さんのオーナーシェフなどの方々がそれを見て「うちでもこの道具を参考にしよう」と写真を撮ったり、「これは店舗でも役に立つ」と工程表を参考にしたりしていました。
質問
—プロの職人も認める出来というのは素晴らしいですね。
鈴木さん
道具や工程が各施設やいろいろなお店に広がって、それを使って障がいを持った人が支援者の補助なく、見守り程度で働けるようになったらいいな、と思っています。 必要な支援が行われつづけることで障がいがあっても、社会で仕事はできる。 それはある意味「障がい」がなくなったと言えるのではないでしょうか。

小麦に魅せられて

質問
—どんなときに仕事で充実していると感じますか?
鈴木さん
障がいを持った人たちと一緒にチームを組んで仕事をし、そのチームで一定以上の完成度の仕事ができた、商品ができたというときに充実していると感じます。
質問
—仕事を通して影響を受けたことはありますか?
鈴木さん
小麦作りにまつわる仕事に多く影響を受けています。 かつて姉妹施設が山梨にあって、私もそこで2年間小麦の生産をしていました。それぞれの施設が独立して運営を進めることになり、小麦の仕事は横浜の共働舎で引き継ぐことになったので共働舎の小麦業務の立ち上げからやらせてもらっています。 秦野で作った小麦を収穫し共働舎がある横浜まで持ってきて、保管する。保管している小麦を順番に製粉し共働舎やパン屋さんへ発送するという業務を作ってきました。 この業務に携わらせていただいたことで、農家さん、市内のパン屋さん、パンの窯屋さん、NPO法人、神奈川県の農林水産ブランド戦略室の方たちにいろいろとアドバイスをいただきました。この経験はとても勉強になりましたし影響を受けていることです。 私自身も小麦に魅せられて、趣味といっても良いぐらいに楽しんで仕事に携わっています。パンだけではなく小麦の動きを発展させていきたいと考えています。 ちなみに、係長なので現場作業に携われないのですが、小麦の作業、製粉作業だけは自分がやっていたいですね(笑)。
質問
—仕事を通して大変なことは?
鈴木さん
人から、障がいを持った人と働くのは大変でしょう、と言われることがありますが、私としては普通に仕事をしているという感覚。手順を細かく時間をかけて教えることはありますが、それは障がいを持った人に限らずどこにでもあることです。障がいを持った人と仕事をすることに面白みを見つけているし、生産、販売、営業など様々な業務を共働舎にいると経験できます。

休日は畑いじりをよくしています

質問
—仕事を通して伝えたいことはありますか?
鈴木さん
いろいろな方に共働舎の商品を見ていただきたいです。障がいのある人たちが作り出したものの「良さ」を伝えらればと思います。また、支援をする仕事を考えている人には、支援をし障がいのある人との仕事を作り出すことのなかに、いろいろな業務に携われる面白みがあります。
質問
—気分転換はどうされていますか?
鈴木さん
畑をいじりに行きます。 あとは小麦の成長記録を写真撮影でつけることですね。 写真が好きなので広報で使う写真や、販売しているポストカードの写真も私が手がけています。
質問
—鈴木さんにとって仕事とは何ですか?
鈴木さん
生きていくということ、暮らしを作るということです。 私たちの作った商品をお客さまが暮らしの中で使い、その収入で障がいを持った人たちの暮らしが作られています。 障がいを持った人たちに仕事ってなんだろうと伝えていくのが仕事だと思っています。
質問
—ありがとうございました

文・撮影/三井泰平