Hamatorium Cafe通信

【企業による若者支援】

人材サービスのパソナグループ 〜人を活かす新しい雇用創造の仕組み〜

 若者が抱える自立や就労の問題において現在、行政やNPO、そして企業が協力してさまざまな支援サービスが行われています。個別の相談によって自立をサポートするものから、共同作業によってコミュニケーション力を身につけるものまで、どのような支援が必要かは一人ひとりの段階に合わせて異なります。

 その段階の中で若者が就労を目指す時、行政やNPOだけでは就労機会を若者に提供することは難しいので、特に企業による理解と協力が重要になってきます。人材サービスを行っている株式会社パソナグループでは、会社の事業を通じてだけでなく独自に若者の就労支援について考える活動をしていると聞いて、お話を聞いてきました。

「派遣」という柔軟な働き方を確立

 株式会社パソナグループは、現代表取締役の南部靖之さんが
「家庭の主婦の再就職を応援したい」という思いから1976年に立ち上げた会社で、今年で創業35年目を迎えます。同社では日本でいち早く人材派遣業をスタートし、新たな就労や雇用のあり方を社会に提案しながら、雇用の仕組みを構築し続けています。

 パソコン研修やインターンシップ制度など、職業トレーニングをいち早く行ってきたことも同社の特徴で、女性のスキルアップによる就労支援や、高齢者や障がい者に対しての就労機会の提供、在宅ワーカーに向けた仕事情報の提供や介護分野の人材育成など、その活動は多岐に渡り、派遣というそれまでになかった柔軟な働き方を広めてきました。

 また、同社では農業分野におけるさらなる雇用創出を目指し、農業経営を学ぶスクールや、新規独立就農の支援にも力を入れています。東京丸の内の本社ビルでは、ビル内でレタスや水菜、トマトなどの野菜を栽培し、1階スペースに設置した水田では実際に田植えを行い米も育てており、農業を知りビジネスとして捉えるきっかけ作りに取り組み、派遣というこれまでの形式だけにとらわれない新しい働き方の提案も行っています。

>>パソナグループの新しい就農支援


雇用の未来をつくる 〜パソナ・シャドーキャビネット〜

 さまざまな職業トレーニングや人材紹介のノウハウを通じて雇用の創出を行ってきた中で、同社がさらなる社会問題の解決を目指して2007年から始めたのが、「パソナ・シャドーキャビネット」という取り組みです。

 これは、イギリスで与党に対抗する野党第一党により組閣される「影の内閣(シャドーキャビネット)」を参考に、パソナグループで独自に発足したもの。現在のパソナ・シャドーキャビネットでは、内閣総理大臣に代表の南部靖之さん、内閣官房長官に作家の石川好さんが就任しており、「農業ビジネス省」、「地域活性省」、「障害者支援省」、「就労支援省」、「若者未来省」、「自力育む省」、「ワーク・ソーシャル・ライフ・バランス省」、「国際関係省」の8省と、「主婦就労支援庁」、「シニア就労支援庁」、「グローバル就労支援庁」の3庁で内閣が構成されています。

 社員と役員は入りたい省庁に自ら参加することができ、各省庁ごとにテーマにそった議論を定期的に行っているほか、実際の国会さながらの「通常国会」を年に2回開催しています。国会で出されたアイデアをもとにして社会問題の解決を目指しているだけでなく、内閣府へ政策提言も行っており、保育士の資格要件緩和に関して提出した改革案が2008年12月には実際に閣議決定もされました。

>>パソナ・シャドーキャビネット


若者が未来に希望が持てる社会の実現

 シャドーキャビネットの中でも、特に若者の支援や就労について考えているのが「若者未来省」。同省では、若者が明るい未来を築くためにどうすればいいかを模索する中で、就職率やフリーター、ニートなど若者に関する問題について話しています。

 同省の板橋光一さん(パソナ・横浜支店長)は「若者未来省では、いま世の中にいろいろな仕事があるが若者が就きたい仕事は限られていて、若者が就きたいと思わない仕事を輝かせていくことができれば雇用創造につながるのではと話しています。テーマは『匠プロデュース』で、自分自身がスペシャリストになれるような仕事を光り輝かせていくことで、その仕事に就きたい人が増えていくことを目指し、そのためには自分たちが実際にそういう仕事を体験してやってみるというコンセプトで活動しています」と話します。

 同社では若者の就労を支援する取り組みとして、就職先が決まらなかった新卒者向けのプログラム「フレッシュキャリア社員制度」を今年よりスタート。大学、大学院、短大を2010年3月に卒業した未就職者を自社で2000人契約社員として雇用することを目指し、実務研修を行うと共に派遣社員として企業に紹介しています。

 これは、パソナ社で研修を行いながら、紹介した派遣先の企業とのマッチングがうまくいけばそのまま採用につなげるという新たな支援の仕組みで、若者支援だけでなく、中小企業がなかなか力を入れにくい新入社員の人材育成をサポートすることにもつながっています。

>>PASONAフレッシュキャリア社員制度


あらゆる層に対する就労支援対策の検討

 そのほか、パソナ・シャドーキャビネットの省庁の中で就労について広く考えているのが「就労支援省」です。同省の活動はパソナグループの本事業でも掲げられているテーマに基づいて、「主婦就労支援庁」、「シニア就労支援庁」、「グローバル就労支援庁」の3庁につながっており、あらゆる就労層の方々を対象とした問題について考えています。

 就労支援省の副大臣を務める根本恵介さん(パソナグループ広報室長)は、若者と企業とのマッチングについて「仕事に対してどうしても視野が狭くなってしまったり、情報があってもそれが自分にとって合ってるものか本人には判断しにくいという問題があります。仕事も働く環境によって適している方は変わってきますので、本人の希望と職場の環境の棚卸しができているかどうかは大事なことです。そうしたマッチングを進めることで、仕事をスタートした後の定着率にもつながってくると思います」と話します。

 また、派遣という働き方について根本さんは「人材派遣では、やりたい仕事を見つけたり、より長く働けるような企業を見つけるステップとして、働く側が仕事に入っていきやすいという良さがあります。ただ、派遣はあくまでも働く方を応援して雇用を作るための1つの手段であり、違う働き方を求める方がいればそれを応援することで、働く楽しさや魅力を広めて一人ひとりが安心して働ける環境を目指しています」と話します。

企業だからこそ実現できる、若者と雇用をつなぐ仕組み

 本業の人材派遣サービスを通じて雇用の創造とマッチングに取り組みながら、シャドーキャビネットとしても雇用を切り口にさまざまな課題解決を目指しているパソナ社の取り組み。派遣労働にはネガティブなイメージがつきまとうこともありますが、生活スタイルに合わせて働き方を選べるという点で、派遣労働の仕組みが雇用の拡大を実現し、それまでは働きたくても働けなかった人たちに新たな働き方を提供してきたことは確かだと思います。

 そして、働くことに困難を抱える若者が仕事に就くためには、自立や就労のサポートと共に、社会全体の雇用機会がさらに広がることが不可欠ではないでしょうか。そのためには、行政やNPOだけでこの問題に取り組むのでなく、パソナ社のように企業側で独自に雇用拡大を実現している取り組みが必要になってくると思います。

 若者の自立や就労に関する問題が注目される中、若者を支援する団体やサービス機関は増えていっていますが、そのサービスを一過性のものではなく継続して提供していくことが、行政やNPOが現在抱えている課題です。自主事業を成り立たせている企業だからこそ継続してできる若者支援があり、パソナ社の取り組みは、事業を通じて社会貢献を実現しているものだと感じます。

>>パソナグループ


取材・文/古屋涼

(2010.07.08)
人材サービスのパソナグループ 〜人を活かす新しい雇用創造の仕組み〜 #hamatorium
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