Hamatorium Cafe通信

【発達障害ってなんだろう?】

発達障害の理解と地域でのコミュニケーション 〜温もりのある社会を目指して〜

 勉強はできるのだけど、こだわりが強くて急な出来事に対応できなかったり、自分の思っていることを相手にうまく伝えられない。言葉によるコミュニケーションが苦手で、対人関係がうまく築けず、言われたことが頭の中で整理できないでパニック状態になることもある。

 「発達障害」はコミュニケーションにおける障害とも言われ、知的障害がなく言葉の発達にも遅れがない“アスペルガー症候群”のように、通常は障害があるように見えなくても、コミュニケーションが苦手なために対人関係をうまく築けないことがあります。すると社会に馴染むことが難しくなるため、学校は卒業できても就職活動がうまくいかず、仕事に就くことに困難を抱える場合もあります。


 では、発達障害におけるコミュニケーションの困難さというのは、実際にどのようなことで、周囲で接する時にはどのような意識でいることが大切なのか。そして、障害とともに子どもから若者へと成長し、社会へ出ていくためにはどのような道があるのかを、この連載では考えていきます。

 今回は、磯子センターで1月16日に行われた講座「コミュニケーションが苦手な子ども達と仲良くなるために~発達障害の子ども達を知りたいあなたへ~」(横浜市磯子区社会福祉協議会主催)に参加し、小学部1年~高等部3年までの障害をもった生徒が在籍する「横浜市立本郷特別支援学校」で特別支援コーディネーターを務める橘高敏也先生と、発達障害のお子さんを持つお母さんにお話を伺いました。

本人のこだわりを無理に引き離すのでなく、気持ちを受け入れる

 「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群などの広汎性発達障害(PDD)、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などに分類される、脳機能の障害のこと。通常は低年齢において症状が発現しますが、発達障害は決して家庭や学校での教育が原因で表れる症状ではなく、先天的な脳機能の障害が起因となっています。

 主な特徴としては、「こだわりが強く、突発的な出来事や予定の変更への対応が苦手」、「時間の感覚がわかりにくかったり、不快と感じる音を聞き流せない」、「相手の話が理解できない、思っていることをうまく伝えられない」、「興味のあるものをすぐ触ったり、手に取ったりせずにはいられない」など。
(参照:国土交通省/知的障害、発達障害、精神障害のある方とのコミュニケーションハンドブック

 本郷特別支援学校の橘高敏也先生は「私たちにとっては何でもないことが、発達障害をもつ人たちにとってはとても重要なことである場合があります。子どもだと、ぬいぐるみなどいつも特定のものを持ち歩いていたり、ものに強いこだわりを持っていることもあります。それを無理に引き離したりしてしまうと混乱してしまうので、本人の気持ちを受け入れてあげることが大切です」と話します。

>>横浜市立本郷特別支援学校


家族や先生では教えられないことが、地域で教えてもらえる

 講座当日、橘高先生とともにゲスト出演したのは、中学2年生の発達障害の息子さんを持つお母さん。息子さんは乳児の時に発育が遅く、発達の遅れが気になり、ちょっとした音にも過敏で、夜も小さな物音ですぐ起きてしまっていたそうです。その後、1歳半の検診をきっかけに「愛の手帳」(療育手帳)を取得し、横浜市地域療育センターに母子通園。5歳になると療育センターに単独通園できるようになり、その後、本郷特別支援学校に入学し、現在は金沢養護学校に通っています。

 お母さんは「息子に障害があることがわかった時は、障害に対する知識もなかったのでどうしていいのかわからず落ち込みました。でも、時間はかかっても丁寧に伝えていけばできることもたくさんあります。障害がなくても苦手なことは誰しもあって、その苦手さの度合いや視点が違うだけ。サポートの手が少し多いだけと考えられれば」と話します。

 また、お母さんは養護学校の子どもたちの保護者がつくる放課後のグループ活動に参加したことで、「地域でのボランティアさんとの出会いから、家族では教えられないこと、先生では教えられないことがあることを知りました。親や先生に見せない、そこでしか見せない表情があって、地域のひとりひとりの方からそれを教えてもらうことができます」とも話していました。

 障害をもっていても、子どもから大人へと徐々に成長していくことはみんな同じこと。その中で、家庭や学校だけでなく地域の中で人とコミュニケーションを取ることで良い刺激も生まれていくんですね。

コミュニケーションが苦手な子ども達との接し方

 コミュニケーションを取ることが苦手な子ども達との接し方について橘高先生は「これから何が起きるか、これから何をすればいいかなど、見通しのないことにとても不安を感じていることが多いので、一度にたくさんのことを伝えないことが大事です。その際も、目線の高さを合わせたり、柔らかい表情で接したりして、あなたのことを受け入れているよという意思表示をすることが大切です」と話します。

 「発達障害の子どもたちは決して何も考えていないのでなく、むしろ私たちよりも多くのことを考えているかもしれない」と先生が言うように、見通しの立たないことに対して特に不安を感じてしまっている場合があるので、言葉を伝える時に不安を感じさせないように、はっきりゆっくりと伝えることが大切なんですね。

 ゲストのお母さんも子どもとの接し方について「何かを注意する時も、“〜しないで”と否定的に言ってしまうと、じゃあどうすればいいのかが本人にはわからないので、“〜してね”というように、やるべきことを伝えてあげています。また、どの電車に乗るかなど言葉ではわかりにくいことは、写真をカードにすることで、持ち歩いてすぐ確認できるようにしています」と話していました。

 発達障害でコミュニケーションを取ることが苦手であっても、本人が受け取りやすいことをきっかけにして、ひとつひとつ順序立ててはっきりと伝えていく。相手がどんな気持ちでいて、何を感じ、何を苦手とし、何を必要としているかを感じ取ることは、障害をもっているかどうかに関わらず、普段から相手に自分の気持ちを伝える上でとても大切なことだと思います。

 家庭、学校、地域など身近な環境の中で互いを思いやるコミュニケーションがもっと増えることで、ハンディや障害を持った子どもたちが若者へと成長し、自分の力を活かせる仕事も見つけられるような、表情豊かで温もりのある社会になっていくのではないでしょうか。

 この連載では今後、発達障害の理解や、支援施設、実際に社会に出て働いている人たちについてレポートしていきます。

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取材・文/古屋涼

(2010.02.03)
発達障害の理解と地域でのコミュニケーション 〜温もりのある社会を目指して〜 #hamatorium
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