Hamatorium Cafe通信

【発達障害ってなんだろう?】

発達障害セミナー 就労準備編(後半)

得意なことを仕事にできるよう目指す

 「発達障害セミナー就労準備編」の後半では始めに、横浜市発達障害者支援センターの相談員・遠藤幹男さんから「学齢期にしておきたい就労の準備」をテーマに講演がありました。

 就労を考える時のポイントとしてまず示されたのは、本人の得意な部分と苦手な部分をきちんと理解するということ。自分が興味関心のないことも受け入れたり、先に起こることを予測した行動を取ることが仕事では求められるため、あらかじめ自分の苦手な部分を理解しておくことが、職場からの理解を得るためにも大切といいます。

 そこで、苦手さを受容して仕事を続けていくには、一人で課題を抱えようとするのではなく、周りに相談したりサポートを受けることも重要になってきます。遠藤さんは仕事と支援者との関係について「支援を受けて働くことを前提に考えていかないと、なかなか実力を発揮できずに仕事を辞めてしまったりする場合があります。ジョブコーチを付けて働いたり、発達障害者支援センターなどでの月1回の相談を受けたり、支援の頻度や内容は人それぞれ違いますが、誰かの助言を受けながら働けるということが大事になってきます」と話します。

 また、仕事を選ぶ時にテーマになってくるのが、好きなことを仕事にするのか、それとも得意なことを仕事にするのかどうかという問題。これについて遠藤さんは「好きなことを仕事にするとつまづいてしまった時が大変なので、得意なことを仕事にする方が良いと思います。相談では、2番目に好きなことを仕事にしてくださいとも伝えています」と話します。

休憩時間や休日の過ごし方、ストレスの解消法を知ることも大切

 就労を考える上では、自分の得意なこと・苦手なことについて認識すると共に、具体的な仕事・職業について家庭や学校で職業学習の機会を持つことも必要です。家庭生活を通じて子どもに就労観を持ってもらう方法として遠藤さんは「親子の会話の中で、『なぜ働くのか、何がしたいのか』ということや、『働くことでお金をもらって生活する』という当たり前のことを一緒に話して確認していくことも大切です」と話します。

 そして、学校や職業訓練所などで実際に仕事に関わる体験をする中で、自分の得意なことと苦手なことを知り、仕事のイメージ作りや、なぜ働きたいのかという意識付けをしていく。その中で、どうしてもできないことは受け止め、配慮が必要なことは周りから理解をしてもらう。実際の場面で1つ1つの行動を学んでいきながら、苦手な場面では支援を受け入れることも必要になってくるそうです。

 また、仕事中だけでなく、休憩時間や退勤後、休日をどうやって過ごすかも、安定した就労生活を過ごすために大切になってくると遠藤さんは話します。「休憩時間に自分で何をしていいかわからなかったり、やっていいことを判断できなかったりするので、その過ごし方を家庭や学校で教えてあげることも必要です。また、疲労やストレスを軽減できるようにするためにも、休日の過ごし方や気分転換になるような余暇活動の選択肢を増やしてあげて、自己管理の大切さを伝えることも大切です」(遠藤さん)

障害者雇用だからといって昇給しないわけではない

 セミナーの最後には、同じく横浜市発達障害者支援センターの相談員・柴田珠里さんから「障害者雇用の基礎知識」について講演がありました。

 障害者雇用のよくある誤解として挙げられたのは、診断や手帳、給与、職場への伝え方などについて。手帳を取得したからといって自動的に障害者雇用になるわけではないことや、一般雇用よりも給与は上がりにくいが昇給しないわけではなく支援者が賃上げ交渉する場合もあること、障害者雇用でもきちんとした仕事として生産性が求められることなどが示されました。

 障害者雇用で働くには手帳を取得している必要がありますが、発達障害という手帳はなく、「療育手帳」か「精神障害者保健福祉手帳」を取得することになります。民間企業や行政機関ではそれぞれ障害者雇用の義務がありますが、障害者雇用として働くには、療育手帳の場合は週30時間以上、精神障害者保健福祉手帳の場合は週20時間以上働く必要があります。

 また、障害者雇用のメリットとして、職場で配慮を受けやすいこと、ジョブコーチなどの就労支援サービスが受けられること、デメリットとしては、キャリアアップや給与の幅が一般就労より狭いことなどが示されました。手帳を取得しているからといって障害者雇用でしか働けないわけではなく、一般就労の求人に応募することもできるので、障害者雇用の仕組みについて理解を深めることで就労の選択肢も広がるのではないかと思います。

就労に特化した支援だけでなく、応援してくれる支援者を地域につくる

 継続して就労をしていくためには、さまざまな支援機関でどのようなサポートを受けるかも重要になってきます。

 柴田さんは支援機関を、就労に関わる相談や情報提供をする「相談」機関、仕事に必要なスキルを訓練する「準備訓練」機関、本人にあった仕事を開拓する「職場開拓 求職活動」機関、就労後も本人につきそって支援をする「ジョブコーチ」機関、長い就労生活の中でアフターフォローをする「フォローアップ」機関の5つに分類し、本人に合わせて支援機関を組み合わせて使うことの大切さを示します。

 「支援機関にはそれぞれの段階によって強みがあり、5つの要素が全部揃っているところはないので、1つの機関だけの支援を受ける場合はまれです。本人にとってどんな内容の支援が必要なのか、どこがそれを伸ばしてくれるのかを知り、支援機関を組み合わせて選ぶことが大事だと思います」(柴田さん)

 また、就労に強い支援機関だけでなく、就労後の相談をどこにしてもらうかなどを考えておく必要性を示し「必ずしも就労に特化した支援だけでなく、応援してくれる支援者を地域に1人持つと良いと思います。それが地域活動ホームの相談員なのか就労支援機関の職員なのかはさまざまですが、応援してくれる人を地域に持ってそこから巣立つ形で就職した方が安定すると思います」とも柴田さんは話します。

 このように今回のセミナーでは、発達障害と就労をテーマに、子どもの頃からできる働く準備と、実際に働く上で利用できる支援サービスについて示されました。幼児期・学齢期の部分で話された家庭で子どもに対して行うコミュニケーションの大切さなどは、障害の有無に関わらず社会性を育むために効果的なことだと感じました。

 また、特色の違うさまざまな支援機関がある中、本人に合ったサポートを選ぶためには、家族や支援機関同士だけでなく、学校や企業などでの理解や情報交換もさらに必要になってくるのではないかと思います。

 苦手さや不得意なことは誰しも持っていると思いますが、そのことを受け入れて理解を示し、一人ひとりが得意なことを活かしながら互いに助け合える関係を作っていくことが大切だと感じます。

>>横浜市発達障害者支援センター「2010年度・研修セミナーラインアップ」

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取材・文/古屋涼

(2010.07.01)
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