これまで、横浜市立戸塚高校定時制での取材を通じて、さまざまな課題を抱える定時制高校の現状についてレポートしてきました。
アルバイト収入で家計を支えながら通学している生徒がいること、入学時の生徒数が4年生になる頃には半減してしまうほど中退者が多いこと、就職内定率が悪化していることで卒業後に行き場所のない生徒たちが増えていること、複合的な課題を抱える生徒が多く一般教員だけではとても対応しきれないことなど、定時制の教育現場では多くの困難が浮き彫りになっています。
その中で、そうした課題を先生や学校だけの問題にせず外部からサポートしようと始まったのが、横浜で若者の支援を行っている株式会社K2インターナショナルジャパンによる取り組みです。今回は、同社による学校訪問支援の様子をレポートします。
戸塚高校定時制では毎週金曜日の夜7時頃になると、就職や進学のための準備を行う進路指導室に、生徒たちが自然と集まり始めます。生徒たちは部屋に入ると「こんばんは〜」と元気に挨拶。挨拶の相手は、週に1回同校を訪れている株式会社K2インターナショナルジャパンの相談スタッフです。
同社はさまざまな境遇の子どもや若者たちへの支援をしてきた中で、学校と連携した早期サポートの重要性を考え、2008年より戸塚高校定時制で先生たちとの意見交換を始めました。そして、2009年11月からは週に1回同社の相談スタッフが学校を訪問し、生徒たちが卒業後に社会で孤立しないように相談支援や情報提供をしています。
サポートの内容は、4年生を中心にした生徒への個別相談。生徒一人ひとりの状況に合わせて、就職や進学などの進路相談や、生活状況に関する相談をしていきます。また、個別相談だけでなく複数の生徒を交えてのグループワークを行うこともあるそうです。
取材当日にまず相談に訪れたのは、看護の専門学校に進学しようかと考えている4年生の女子生徒。進学してみたいという希望はありながらもまだ具体的な準備はしておらず、個別相談ではこれから必要なことの確認と、本人の希望を整理していく話がされました。
同社のキャリアカウンセラーの方からは、「看護以外の専門学校とか就職は興味ある?」「進学と就職どちらにしてもそろそろ調べ始めないとね」「まずは専門学校の資料請求をしてみようか」といった問いかけやアドバイスがされ、生徒は答えに悩みながらも、徐々に自分の考えが整理されていく様子が見てとれます。
そして、まずは専門学校についてくわしく調べることで、進学の可能性について現実的に検討してみることが必要とわかり、相談を終えた女子生徒も「昔のことも話したりして、自分のことを知るのにつながりました」と感想を話します。
次に相談に訪れたのは、製造業への就職を目指す4年生の男子生徒。高校卒業者向けの企業求人は、7月に一斉に公開され、生徒たちの就職活動は夏休み前の時期から本格化していきます。
この生徒に夏休みの予定について聞いてみると、「就職活動の準備できっと1日も休めないですね。でもがんばります」との返事。まだ高校生とはいえ、社会に出ることを意識した一人の大人として、就職に向けた意気込みが感じられました。
個別相談では、応募に向けて自分の得意なことをはっきりさせておく大切さや、アルバイトの面接を受けることも就職のための準備になることなど、就職活動に向けた応募や面接についてアドバイスが中心にされました。この生徒は個別相談を受けるのはすでに5回目で、学校内でこうしてじっくり相談できる時間があることはとても心強く感じるそうです。
同校での相談支援を担当し、「湘南若者サポートステーション」の統括コーディネーターも務めるK2インターショナルジャパンの岩本真実さんは「継続的に支援をしていく中で、まずは就職活動って怖くない、来るのが楽しいと感じてもらえれば」と話します。
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取材当日、すべての相談が終わった時にはすでに夜10時を過ぎていました。相談を終えた後でも、生徒たちは進路指導室に夜遅くまで残って進学や就職に向けた勉強をしており、先生たちも一緒になって必死に一人ひとりのサポートをしています。
同校で4年生を担当をしている藤本やえみ先生は「金曜日の相談を楽しみにしている生徒もいて、生徒たちにとって進路を考えるためのとても良いきっかけになっています。学校側だけでは見えてこないものをK2さんといっしょに取り組むことで、一人ひとりに合わせた支援を広げていければと思っています」と話します。
全日制高校に入れなかった生徒が多く入学してくることからも、現在定時制にはさまざまな状況の生徒たちが集まり、先生たちだけでは一人ひとりに対応することがとても困難になっているそうです。
外部の専門機関が学校をサポートするというK2インターナショナルによる取り組みは、横浜市がより良い政策実現を目指すために行っている「横浜会議」の研究テーマにも選ばれ、研究グループによる生徒たちへのインタビューやアンケート調査によって、これまで明らかになってこなかった定時制高校の抱える厳しい現状が浮き彫りになることにつながりました。
学校と民間団体とが協力した支援のあり方は、多様化する子どもたちの問題を支援していくには必要不可欠なこと。こうした取り組みが戸塚高校定時制だけでなく他校でも実現されるためには、生徒と先生たちの声にもっと耳を傾けることで、学校の現状を把握していかなければならないと思います。それを学校だけに任せるのでなく、NPO団体や企業などが垣根なく学校と協力できるような仕組みが、子どもたちにとって必要なことではないでしょうか。
取材当日、相談を受けた生徒の中には「早いうちからこうして相談できたらもっとよかった」と話す生徒もいました。外部の専門家からこうしてアドバイスを受ける環境を、何より生徒たちがもっと求めていることを示しているのではないでしょうか。
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