石井「ただ、在宅ワークには入札があり競争原理がある。働く方はいろんな意味で不安だと思うんですよ。これは若者の支援機関の方々も一番引っかかるところだと思います」

「ビジネスでもスポーツでも競争があるのはいいことだと思っていましたから、そこが引っかかるのは正直想定外でしたね…(苦笑)」

木村「安心を提供できるのかという点で言うと、自分のスキルがこれぐらいあればこれぐらいの金額で仕事を受けられる、というバランス感がわかって安心感を得られるのは大事だと思いますよ」

「競争があるからコミュニケーションが生まれ、受注を増やすためにもっといい文章を書きたい、もっといい提案ができないかと考え、努力するんですよね。競争を怖がっていたらその先は多分続きません。最低限収入を得て自立するんだと思ったら、そこに立ち向かう姿勢は必要になってくると思います」

石井「それでは、技術はウェブ上から指導できるとのことでしたが、精神的なサポートについてはどうなっているんでしょうか?」

木村「ミクシィやツイッターを使ってネット上からの社員のメンタルサポートも可能ではと思い、弊社でもポータルサイトを作りましたが、実際はあまり社員からアクセスしてきません。そういう人たちにはメーリングリストなど、読まれようが読まれまいが関係なく、情報のシャワーを浴びせちゃう。そうすると、肩を叩いてくれているような安心感があるみたいなんです。『つながり感』を出して精神的なサポートをするのに、ネットの力もいいと思いますね」

石井「星さんから支援者へ、こういうことから始めてみては、というとっかかりやすい提案はありませんか?」

「まずはデータ入力が簡単ですね。名刺をエクセルに入力するというのはどの企業にもニーズがあるんです。エクセルでもワードでも暗黙の了解みたいなルールがありますが、テクニックは学べば誰でもできるものです。ただ、どんな仕事にも見積りや、仕様を理解すること、検品、納品といった前後作業というものがあります。こういう作業のほうが難しいかもしれませんので、ここを支援者の方がサポートしてあげたらいいと思います」

石井「『簡単な』とか『単純な』と星さんが言ったときに、それがどれぐらい簡単なのかがなかなか見えないところに正直不安もあるんですが…、その難易度の可視化はできるんですか?」

「実践に即した模擬練習をしていくことで、これならいけそうだなと、ある程度実感できると思いますよ」

石井「普段インターネットはしているけど、ワード・エクセルは立ち上げたことがない、という方もすごく多いのですが、それぐらいのレベルの方で、在宅ワークができるようになる一般的な下積み期間はどれくらいでしょうか?」

「説明書を見ながらやれば、1ヶ月もいらないと思います。説明書を見ないでやれるようになるには3ヶ月から半年が必要になってきますが、繰り返し行うことで技術は上がっていきますよ」

石井「ではここで、会場からご質問のある方がいらっしゃれば」

参加者「これから在宅ワークをやってみようという若者が、どれぐらいのコミュニケーション・スキルが求められるのかが不安要素だと思いますが、どれぐらいのスキルが必要でしょうか?」

「はっきりは言いにくいですが、受注が成立するのであればメール1行でもいいんです。受注するテクニックの一つとして、適正単価が出せるか、お客さんが安心するような見積書を出せるか、そういうのがコミュニケーションだと思います。もちろん、いきなりため口で話せば企業は発注してくれません。まずはそれぐらいのことだけ必要で、こうすれば企業も安心する、ということは学んでいけると思います」

木村「実はクリエーターの中にも、コミュニケーションがめちゃくちゃできない人だっているんですよ(笑)。だけどすごいいい仕事をする人はたくさんいるんです!」

「(非常に実感を込めて)はい」

木村「だからコミュニケーションができないから仕事ができないということではないと思います」

「言ってしまえば、技術があればコミュニケーション能力はいらないんです」

石井「なかなか働けない若者の中では、アルバイトの応募電話が怖いという方がほぼ100%です。変なこと聞かれそうだから、というのがその理由なのですが、変なことなんてまず聞かれないんですよね(笑)。だから、在宅ワークの受発注の時も初めに想定問答のようなマニュアルを作っておいて、それを見ながら電話できればなんとかなると思います。それは大袈裟に言えば、コミュニケーション・スキルなんていらない、ということなんだと思います」

木村「何をしてきた人かも関係がなくて、今、何が出来る人なのかだけが重要になる。そういった意味では、履歴書の空白も関係ない、まさにリセットのきく仕事として、在宅ワークはいい働き方なんだと思います」

次回は、株式会社うるるの星さんが講師となり行われた「在宅ワーク」の働き方講座の模様を、動画でご紹介します。




星 知也

在宅ワークの促進に取り組む「株式会社うるる」代表。企業と在宅ワーカーとのマッチングを支援するサイト「Shufti」や、在宅ワーカーのスキルアップサイト「在宅ワークアカデミー」などを運営し、在宅ワークの活性化に取り組んでいる。在宅ワーカー希望者は700〜800万人いると言われる中、在宅ワーカーが働ける基盤を構築して、派遣やアルバイトにかわる日本の新しい労働力として在宅ワークという働き方ができる仕組みづくりを目指している。

木村 朋大

システムエンジニアなどITのプロフェッショナルが所属する「SEプロダクション株式会社」代表。エンジニアは時間や場所を超えて仕事ができるため、エンジニアの将来像として、通勤の必要がない働き方である在宅ワークに魅力を感じている。またこれまでに、「よこはま若者サポートステーション」を運営する「ユースポート横濱」と連携して「若者向けプログラマー養成講座」などを実施したこともあり、若年者就労支援にも積極的に取り組んでいる。

石井 正宏

株式会社シェアするココロ代表。当サイト編集長。NPO法人でひきこもり状態にある若者の支援に長く携わり、09年5月に会社設立。若者の支援として、フリースペース、若者自立塾、地域若者サポートステーション、家庭訪問、インターンシップ、キャリア教育事業等に責任者として関わり、支援現場の第一線で活躍してきた。