石井「僕がこの話を聞いた時に、支援者の方々の納得感と同じぐらい保護者の方々の納得が必要だろうと思ったんです。在宅ワークってある種ひきこもりじゃないですか。ひきこもりじゃなくなってもらうために支援施設に行ってもらっていて、そのゴールが誰とも会わないひきこもりに戻ってしまったような仕事というのは、保護者的には受け入れられないんじゃないかと」

山口「やっぱ拠点化しないとダメですよね」

岩本「ある種の才能があったり、そこに意味があって、ひきこもりのような状態で仕事をしている人たちにとってはいいじゃないですか。でもそれは才能とか能力のある人、意思のある人の話だと思うんですよね。ただ、それでずっと食べていけるのかは心配ですよね」

山口「大多数の人には結構難しいんじゃないでしょうか。ただ、在宅ワーク拠点で十分トレーニングを受け、独立して起業する可能性もありますね」

石井「個人事業主というレベルならありえるかも」

岩本「なんで就労体験のように段階的に就労に結びつけるようなことを私たちがしているかというと、そのほとんどは社会性を身につけてもらうためにやっているんですよ。
 そうすると、この在宅ワークは、本当に経済的に困っている人には必要かもしれないけど、もっと本質的に自立を目指している若者にとっては、むしろ自立が遠くなるような気がするんですよね」

石井「なるほど。その社会性を身につけるっていうのと同じぐらい大事なことが自己肯定感をどう持ってもらうかということだと思うんだけど、納期に間に合ったという達成感の積み重ねから、自分でもやれるという自己肯定感が得られるということはあるのかな、とは思うけど」

鈴木「そこで賃金が発生した時に、それがあんまり高いとプレッシャーになってしまうので、私は低くていんじゃないかと思う」

山口ワーカーズコレクティブの分配金的な発想ですよね。これまで、若者の就労といったら、正規か非正規かなどの二元論になってしまっているけど、まさしくワーカーズの方がおっしゃっていたけど、『ため、貯め』の場を創出するというのが新しい仕組みの課題③ではないかな。
 つまり、在宅ワーク拠点から、IT技術を習得して正規就労へ巣立っていく人もいれば、経済的自立のためのかさ上げ分をここで得る人もいる。つまり、こんな感じ」

石井「支援施設でのカリキュラムっていうのは作業行程を複雑にすることでカリキュラムとして成立させているところがあるわけだから、分配する程の稼ぎが得られるのかっていう気もするけど(苦笑)」

山口「この在宅ワーク拠点が、困難を抱えた若者たちにとっての“慣らし的”な労働にならないのか、という発想ではどうでしょうね。
 それだけで自立ではなく、小額だけど収入をいただきながら、なおかつ在宅ワーカーとしてのスキルがサポートされながら身につくとか、次へのワンステップにもなるとか」

岩本「後は企業との信頼関係をどう構築していくのかということも大きな課題ですよね。
 同じビジョンをちゃんと共有できるのかとか。そこがないと若者と企業の間に私たち(NPO法人)は入りにくいですよね」

鈴木「そうですよね」

山口「企業は、仕事の技術やスキルは教えてあげれるけど、若者たちの精神的な支えであるメンターとしての役割を支援団体の方々にしてもらえる仕組みを作っていけるかですね。
 そもそもこういう働き方に若者のニーズがあり可能なのかというところも今後ディスカッションしていければと思います」

 次回は、この場で話し合われたことをテーマに、企業の方々とディスカッションをし、企業側のメリットを残した建設的な落としどころと、支援者側(若者)のメリットが摺り合わせられるのかについて語り合っていきたいと思います。




岩本 真実

「よこはま型若者自立塾JOB CAMP」運営主体であるNPOヒューマンフェローシップ理事、(株)K2インターナショナルジャパン若者自立塾Y-MAC統括責任者。 若者の自立・就労支援の第一線で活躍し、地域や企業とも積極的に連携。JOB CAMPでは宿泊型の就労体験を通じて、若者の働く力を支援している。

鈴木 晶子

NPO法人ユースポート横濱が運営する「よこはま若者サポートステーション」の施設長を務め、臨床心理士としてメンタル相談も行う。よこはまサポステでは、施設でのプログラムや情報提供に加え、出張型セミナー「おでかけサポステ」を実施することで、若者の就労に向けたステップを幅広く支援している。

山口 陽子

横浜市こども青少年局青少年育成課で、青少年自立支援事業に取り組む。若者のための集い「ヨコハマユースフォーラム」の開催も担当し、青少年自立支援のための政策や事業を、NPO・学校教育機関・企業・市民・行政など幅広い主体の交流とネットワークによって発展させていくことを目指している。

石井 正宏

株式会社シェアするココロ代表。当サイト編集長。NPO法人でひきこもり状態にある若者の支援に長く携わり、09年5月に会社設立。若者の支援として、フリースペース、若者自立塾、地域若者サポートステーション、家庭訪問、インターンシップ、キャリア教育事業等に責任者として関わり、支援現場の第一線で活躍してきた。